Keynote Speech:AMを核としたものづくりの未来 - 量産社会の常識から逃れるということ

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山中 俊治 Shunji Yamanaka

(Photo by Naomi Circus)

Profile:
1957年愛媛県生まれ。東京大学工学部卒業後、日産自動車デザインセンター勤務。1987年よりフリーのデザイナーとして独立し、腕時計から鉄道車両に至る幅広い工業製品をデザインする一方、1991年より94年まで東京大学助教授を勤める。1994年にリーディング・エッジ・デザインを設立。2008~2012年慶應義塾大学教授。2013年4月より東京大学教授。

Summary:
私たちは、あまりにもどっぷりと量産社会にいます。消費者としての私たちは好みの椅子を膨大な商品群から買うことができますが、実はどの椅子も「あなたに合わないことはない」範囲で設計されたものに過ぎません。本当の意味であなたの体、あなたの生活にフィットするようデザインされた椅子は今のところ世界のどこにも存在しません。量産社会とは、全ての人が標準的な設計で我慢している社会でもあるのです。
Additive Manufacturingをベースにしたマス・カスタマイゼーション社会を成り立たせるためには、製造プロセスだけでなく、商品企画、設計、コストなどものづくりに関わる様々な概念を見直さなければなりません。作り手としてのあなたが、製品コストと聞いてすぐに生産量、マーケットサイズに頭がいくのも、量産効果が常識になってしまっているからです。
本講演では、私と東京大学山中研究室が開発してきた様々な「未来のものづくりのためのプロトタイプ」を紹介します。私たちの身の回りのモノが、どのように変わっていくのか、皆さんと一緒に考えるきっかけになれば幸いです。

Invited Speech:ソフト材料開発と3Dプリント技術で拓くソフトマターロボティクスの分野横断的統合アプローチ

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小川 純 Jun Ogawa

Profile:
1988年札幌市生まれ. 2015年北海道大学大学院終了.博士(情報科学). 専門はアニメイテッドロボティクス,ソフトマターロボティクス.やわらかいモノから創り出せる知能や演出に興味を持つ.博士号取得後,米国コロンビア大研究員,会津大ロボット事業准教授を経て,2019年より山形大工学部准教授.現在はアクチュエータ,3Dプリント,人工知能など分野横断的にゲル材料の『やわらかさ』を活かす技術開発に着手.ソフトマターロボットの社会実装に向けて,ゲル技術をロボットシステムに統合する研究に挑戦している.

Summary:
ソフトマターロボティクスは身体の主要な構成材料にソフト材料を積極的に採用し,能率的にソフト材料を動かす機構・駆動系,柔らかさを認識する感覚器系,ソフト材料特有の表現法などを扱う要素技術の総称である.ソフト材料は「柔らかさ」に起因する弾性や伸縮性,自由曲面への密着性などの変形に係る優れた特徴をもつが,実際に具体的な姿形をもつロボットの技術に転換する場合,非効率的な駆動力伝達や3次元造形の困難さ,時間経過による予期せぬ物性の変化などの欠点が浮き彫りになりやすく,結局は従来の硬い金属やプラスチックで代替されてしまうことが多い.しかし,柔らかく,そして時間で変性する性質にこそ,実際の生物がもつ機能の本質に迫るものがある.また,柔らかいセンサを通して,ソフト材料から得られるデータは動きの識別を容易にする情報を含んでおり,特徴量解析を適用することで,高精度なパターン識別器として応用できる.本講演は,このような「ソフト材料を活かす方法」を念頭に置いたこれまでのロボット開発事例を基に,ソフト材料開発から一つの完成されたソフトマターロボットの開発に至るまでに登場する材料科学,機械工学,電子工学,感性工学,情報科学の要素技術を分野横断的に統合するアプローチについて紹介するともに,3Dプリント技術の重要な役割と意義について私見を交えて議論する.

Special Session:五輪エンブレムから立体/3Dプリンティングへの幾何学的展開

野老 朝雄 Asao Tokolo
平本 知樹 Tomoki Hiramoto
湯浅 亮平 Ryohei Yuasa
江口 壮哉 Soya Eguchi
田中 浩也 Hiroya Tanaka

Profile:
野老朝雄(五輪エンブレムデザイナー, tokolo.com)、平本知樹( 株式会社wip )、湯浅亮平(キョーラク株式会社/慶應義塾大学SFC研究所)、江口壮哉(慶應義塾大学総合政策学部)、田中浩也(慶應義塾大学環境情報学部・教授)

Summary:
市松模様で表現された 東京2020五輪エンブレム は、形の異なる3種類の四角形を繋げて円状に表現し「違いを乗り超えてつながり合う」ことを伝えたものでした。
今回、この「つながる幾何学」というコンセプトを踏襲しながらも、平面(2D)から立体(3D)へと次元を上げ、あたらしいカタチを幾何学的に探求していく研究を3Dプリンティングを最大活用しながら行いました。
4DFF2020のスペシャルセッションでは、このプロセスを五輪エンブレムデザイナーの野老朝雄さんを交えて発表します。