The Journal of 4D and Functional Fabrication

4DFF電子ジャーナルNo.3発行に向けて　4DFF2023大会実行委員長　湯浅 亮平(慶應義塾大学)

4DFF電子ジャーナルvol.3の発行，誠におめでとうございます． 本研究会は2018年に4DFP（4D&Functional Printing）研究会として「4Dプリンティング」という，主に製造後の形状変化を伴う3Dプリントをはじめとするデジタル製造技術や高度な印刷技術にフォーカス当てて発足しました．さらに２年目からは，海外で生まれた潮流に留まることなく日本の研究会らしさを考え続けた結果として，新しいものづくり技術や考え方で「新たな価値」を生み出す研究や活動全般にスコープを広げて活動するため，敢えてプリントという枠組みを外し4DFF（4D&Functional Fabrication）研究会として再スタートを切ります． この結果，形状変化だけにとどまらず，強度，感触，色，成長と再利用など，発足当初は予想もしなかった多彩なテーマの研究が行われ，生まれた技術は医療・食・ファッション・農業・資源循環・技術継承やまちづくりなど，ものづくりの枠も超えた応用の兆しが見えてきたと感じています． 4D＝変化，多様な価値観を受け入れる懐の深さからくる面白さの様なものが，ここにあらわれています．年次のコンファレンスや研究会では，様々なバックグラウンドを持つ研究者・企業・実践者が「新しい価値」を探すという目的を軸に，それぞれの専門性を持ち寄って分野を横断して一堂に会することで，研究者個人や一つの専門分野の中だけでは得られない新たな知見やひらめきが生まれる機会となります． ありがたいことに，毎年秋に行われる年次カンファレンスへの参加者は年々増えており，2024年は初めて50を超える発表が予定されています．どうやら今年も新しい分野からの参加者がいる様で，どの様な議論が起こるか今から楽しみでなりません． さて近年，3Dプリントをはじめとするデジタルファブリケーションを活用した製品や事業はいくつも生まれ，社会の中で当たり前の様に使われている場面に出会うことも増えました．研究会発足当初の目標の一つでもあった，デジタル製造技術の向上と社会への普及は一定程度実現し，すでに自走状態になっていると考えることもできます．そんな今，この研究会の役割がどこにあるかを考える時，明治時代の思想家である岡倉天心の言葉が思い浮かんでいます． 「変化こそ，唯一の永遠である」 常に変化する状況を受け入れ，その中で周囲からの刺激で自身もしなやかに変化しながら「新しい価値」を探索し続けていくこと．それ自体を4D的な活動と捉え，私自身もまずは日々の生活を大切に過ごそうと決意をすると共に，4DFF研究会や，関わられている皆様の更なる発展（＝継続的な変化）を願って締めくくりといたします．

4DFF論文誌No.3編集後記　藤井 雅彦(慶應義塾大学SFC研究所/inkcube.org)

ある国際コンファレンスのCommitteeの委員を務めていた時の話です．コンファレンスがカバーしていた技術がマチュアになり，発表件数・参加者の減少が顕著になりました． カバー領域や方向性を変える議論を行った会議で，ある委員はまずコンファレンスの新しいBrand(名前)を提案し，登録された商標を調べ始めました．これに対し中身をまず決め，それに沿ったBrandを付けるべきだと主張した委員もいました． どちらが正しく，どちらが間違いというものではありません．状況によって適切なアプローチは違うはずです．しかし大きな変革が求められており，大胆に変化する姿勢を見せなければならない状況で，まず名前を変え，自分たちを追いこんで名前に相応しい必要な施策を考えて行動する，そういうやり方に私は1票を投じ，その後新しいコンファレンスとして再スタートしました． 多くの人を変化に巻き込むためにはその真価を問うことが必要です．どちらのアプローチから始まった研究でも構いません．成果を4DFFで発表・投稿し議論を巻き起こしてください．