The Journal of 4D and Functional Fabrication
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2020年号(第1号)
No.1 (2020)
(2020年9月14日発行)

発刊の挨拶
4DFF研究会 代表
田中 浩也 (慶應義塾大学) 
私が「4D Printing」という言葉をはじめて知ったのは、2010年にマサチューセッツ工科大学に留学していたときのことです。当時クラスメイトだったSkylar Tibbets氏(現「Self-Assembly Lab」主宰)が、電気を用いず、形状の相互作用と環境のエネルギーのみで、物質が自在に「変形」する研究をしたい、と熱く夢を語ってくれたことを覚えています。ご存知のように、その数年後に、彼は満を持してTEDでこのコンセプトを世界に広めることになります。また2015年より、オランダで「4D and Metamaterial Conference」が年1回開催されるようになりました。ここでは、大学の研究者と産業界・企業、そしてデザイナーやクリエイターが交わって、年1回、1日中話し込みます。「4Dの定義は何か?」という概念的な議論から、「応用先は何だろうか?」という社会実装の議論まで。私も2017年に招待されて以来、毎年欠かさず参加しているのですが、いつもたくさんの刺激をもらって帰ってきます。この会の特徴は、「材料」「機械」「設計」「応用」の技術が分け隔てなく混然一体としており、人々の関心が最終的に「新しい価値の模索」へ向かっていくことなのです。そして、サイエンス・テクノロジー・デザイン・アート・ビジネスを横断する、新しいつながりが創造されます。日本にも、今こそこうした場が必要とされているのではないか、と思い続けていました。

その後、日本でも準備が開始され、2018年、2019年と2度の国内カンファレンスを経て、満を持して今回の特集号です。これまで「4Dの4番目の次元は何か」と幾度となく質問されましたが、まさにそれこそがオープンクエスチョン=議論の主軸であり、「問い」でもある、としています。「時間軸」はひとつの答えですが、それだけに限るとは考えていません。3Dプリンタを、「単なる“もの”が出てくる装置」と捉えるのではなく、「“新しいものを生み出す”装置」、と捉えなおしてみる場合、新しい(見えない)価値次元について、広くいろいろな議論を交わす必要があるのではないでしょうか。また、「Functional Fabrication (機能性ファブリケーション)」という言葉を入れた理由は、形状チェックのための試作装置から、実用品を直接製造する技術に大きく進化したAM (Additive Manufacturing)を今後さらに深めていくために、「機能」を製造する方法について、議論を重ねていく必要があると考えたからです。

こうした知見を学術的に記録・蓄積し、分野自体を育てていく場として、本特集号は新たな船出です。ぜひ、あらゆる分野、年代の方とともにこの分野を育てていけたらと考えています。最後になりますが、この場をお借りして、これまでにご尽力・ご協力いただいた関係各氏の皆様に厚く御礼を申し上げます。

4DFF研究会 運営委員長
藤井 雅彦(inkcube.org) 
Additive Manufacturing,すなわち3Dプリンタは製造装置としての地位を獲得し,関連するサプライチェーンを巻き込んで着実に実用化が進んでいます.形という情報を早く正確に信頼性高く,そしていかに安く具現化する活動はこの流れのなかで確実に進歩していくでしょう.

一方,AM技術はこれまでの製造方法では困難であった複雑な内部構造の実現や材料の混ぜ合わせ,さらにフルカラー化を行うことが容易であり,この特徴を活かして形以外の価値(4番目の次元)を創出する研究分野が次に続くべきだと考えます.また,この領域はAM技術のみならず様々な新しいファブプロセスが寄与できるとも考えています.

この研究領域を活性化し,研究者のネットワークを形成し,研究成果を価値に昇華させて将来の社会に向けた準備を始める時期がきています.このためこの活動を支援するための学術団体「4DFF研究会」を設立し,2018年より研究成果の発表とネットワーク形成の場としてのコンファレンスを開催してきました.そして活動のもう1つの柱である論文誌(電子ジャーナル)をここに発行することが出来,日本でも本格的にこの研究領域が立ち上がることを期待したいと思います.

編集・発行:一般社団法人 日本画像学会